大別すれば6分野
今回は医療DXについて米国の主な会社とそのサービス内容について紹介する。取り上げた理由は、アマゾンファーマシーの参入はもちろんのこと、薬局の調剤業務の外部委託なども始まるなど業界が大きく変わっていく状況のなか、効率化の事例として米国から学べることも多いかと思ったためだ。
医療DXの範囲は広いため分類を調べたがおおよそ6つに大別されるようだ。全体的な特徴としてグローバルで戦う企業が多いこと。ベンチャーを大手が買い取って規模を拡大、市場のパイを先に取った企業が優位に事業を進めている。
①の遠隔医療に注目すると、日本のオンライン診療は慢性疾患がメインだが、米国では自由診療のダイエット(糖尿病薬を使用)や薄毛外来、低用量ピルといった美容系のものも多い。また、精神的なケアもメインのサービスとして含まれている。日本でも精神科のオンライン診療はあるが、まだまだ少ないようである。日本ではカウンセリングより「占い」を使って心のケアをしている人が多いという話もあるが、これらは電話やネットサービスがメインである。今後、メンタル系の分野はオンラインでの認知度や満足度が高まれば、カウンセリングも含めて市場が伸びるのではないかと考える。
また、Amwellに関しては、アマゾンが物流と医療ケアサービスを行っているので、処方薬はもちろん、衛生材料など身の回りの物の販売とも親和性が高い。日本でも健康データ管理とともに包括的なサービスに注力するのだろう。
③のAIとデータ分析については、米国保険会社が圧倒的に立場が強いなかで、医師の治療の妥当性に関するデータ分析・検証が盛んだ。日本には「医療費適正化事業」があり、健康保険組合や国民健康保険で分析が行われて、一番着手しやすい薬剤重複を減らすなどの取り組みがある。ただ、組合や自治体ごとに行われており、まだまだ非効率である。米国企業の参入により一瞬で効率化が図れると思ったが、複雑な日本の診療報酬体系が参入障壁になるので、外資の脅威は現時点でないのかもしれない。
⑤のリモートモニタリングとウェアラブル分野では、若者の健康管理が注目されている。日本では介護分野で発達しているように思う。バイタル以外にも寝返り・転倒のリスク感知、おむつの交換タイミングなどセンサーデバイスでモニタリングされている。
米国でも貧困で施設に入れず単身で住む高齢者が増えてきていると聞く。
⑥のデジタル治療ではアプリでの治療管理について、日本でも高血圧や禁煙などCureAppの製品が保険適用されているが、米国の成功事例を参考に日本でも導入が進められていくと推測される。
日本では薬物治療が安価なこともあり普及がなかなか進んでいないようでだが、薬物療法の限界もあるのでデジタル治療の分野の発展は必須だろう。
引き続き海外事例をみながら日本の医療業界の展望を考察していきたい。