糖尿尿と肥満症、MASH治療の最新研究
欧州糖尿病学会の第60回大会が9月9日〜13日の5日間、スペインのマドリッドで開催された。世界の専門家が集結、最新の研究成果を共有した。
小児肥満症に光明
デンマークのノボノルディスクは注射用肥満症治療薬「サクセンダ」の6〜12歳未満の肥満症の小児を対象とした第Ⅲ相試験について、安全性と有効性を示したと発表した。この「SCALEキッズ試験」には、ベースライン時の平均BMI(kg/㎡)が31.0、体重が70.2kgの小児82人に対し、56週間にわたり健康的な食事や身体活動など生活習慣への介入を行った。被験者の半数以上が耐糖能障害や思春期早発症など肥満に関連した合併症を有していた。
56週後に主要評価項目を達成し、プラセボの1.6%増加に対し、サクセンダは平均5.8%のBMI減少を示し、7.4%の有意差を示した。さらに2つの副次的評価項目でもプラセボを上回った。平均体重増加率はプラセボ群10%に対しサクセンダ群1.6%で、8.4%の差があった。さらにBMIが少なくとも5%減少した被験者の割合は、サクセンダ群の46%に対し、プラセボ投与群は8.7%だった。サクセンダ群は拡張期血圧とHbA1C値でもプラセボより良好な改善を示した。
ノボは経口肥満症治療薬「アミクレチン」が達成した13%の体重減少に関する詳細データも発表した。アミクレチン投与患者が12週目に達成した13%の体重減少は、プラセボ投与群にみられた体重変化の平均値よりも有意に大きいとした。被験者は体重減少停滞に陥っていないようであり、長期にわたってさらなる体重減少が起こる可能性があると言及した。
今回発表した小規模試験はBMIが25〜39の糖尿病のない患者を対象とし、アミクレチンかプラセボを1日1回投与した。治験の主目的は治療に起因する有害事象を記録することだったが、副次的評価項目では体重減少の可能性も示唆する結果となった。有害事象はほとんどが軽度〜中等度で、これらの事象は用量依存的だった。そのため、高用量を投与された患者は当初忍容性が低かった。ノボは用量漸増を導入した結果、安全性と忍容性のプロファイルが許容範囲に達したという。
中国イノベント・バイオロジックスは、成人の2型糖尿病と肥満症を対象とした「マズデュチド」を評価する2つの第Ⅲ相試験データを発表した。肥満症または過体重の患者を対象とした第Ⅲ相GLORY-1試験のデータと、第Ⅲ相DREAMS-2試験の詳細な結果である。マズデュチドはGLP-1/GCGR受容体作動薬で、米イーライリリーが開発し、イノベントが中国での開発・販売権を取得した。その他の国での権利はリリーが保持している。
イノベントは現在、中国の2型糖尿病か肥満症、両方を有する患者を対象に5つの第Ⅲ相を実施している。また、慢性的な体重管理と2型糖尿病の血糖コントロールの両方で、マズデュチドの承認申請を中国に行っている。
今回の発表は、6月の米国糖尿病学会に発表したGLORY-1試験データに基づいている。この試験には過体重または肥満の中国人患者610人が登録。4mgと6mgのマズデュチド投与で、それぞれベースラインと比較して10.97%と13.38%の体重減少を達成した。48週時点で、高用量のマズデュチドを投与された患者の50.6%が15%の体重減少を示した。また、マズデュチド投与患者では心血管系と腎臓の機能も改善した。2つのマズデュチド投与群の複合解析では、プラセボに比べ、収縮期血圧やトリグリセリド、コレステロール、LDL値の改善、血清尿酸値の低下を示した。
イノベントは、脂肪肝に関する探索的データも発表した。その結果、肝脂肪含量(LFC)が用量依存的に減少することが示された。プラセボではLFCの減少は0.8%だったが、マズデュチド4mgと6mgではそれぞれ平均7.7%と13.6%LFCが減少した。
DREAMS-2試験は731人の中国人の2型糖尿病患者を対象に、マズデュチド上乗せ療法を評価したもの。メトホルミン、SGLT2阻害薬、チアゾリジン系薬剤などの治療に追加した。28週後、マズデュチド4mg群と6mg群では、それぞれベースラインからHbA1cが平均1.69%と1.73%減少したが、比較した「トルリシティ群」では1.36%の減少にとどまった。
イノベントは、これらの被験者の体重減少にも注目した。28週時点でのマズデュチド4mgと6mgの投与群の50.1%と64.3%が、少なくとも5%の体重減少と7.0%未満のHbA1cの両方を達成した。一方、トルリシティ群は19.4%だった。
イノベントは今後、マズデュチドについて、血圧や脂質、血清尿酸、トランスアミナーゼなどの心代謝リスク因子の改善に関する詳細な結果を、学術誌に発表する。