革新的な治療法であるin vivoゲノム編集が本当に臨床上有効なのかーー。それを問う、第Ⅲ相試験が今年3月18日、10月7日、そして11月1日、相次いで始まった。順調に行けば最短で26年には決着がつくことになる。1度治療すれば生涯にわたって治療効果が継続すると期待されるゲノム編集治療が、既存の低分子医薬や新モダリティである核酸医薬、遺伝子治療、再生医療の強力なライバルとして浮かび上がって来た。


 ゲノム編集治療は大別してin vivoとex vivoの2種類がある。ex vivoゲノム編集治療は細胞を体外でゲノム編集治療して、患者に移植する治療法だ。これに対してin vivoゲノム編集治療は、直接患者にCRISPR-Cas9などのゲノム編集酵素とその標的遺伝子を定めるガイドRNAを注入して体内でゲノム編集を誘導する。当初はex vivoゲノム編集治療が先行すると考えられていたが、薬効不足のためか第Ⅱ相で足踏みしている。これに対し臓器特異的なDDS(薬物送達技術)の急速な発展が、in vivoゲノム編集治療を商品化の最前線に押し上げた。


 3件のin vivoゲノム編集治療製剤の第Ⅲ相に着手したのは米インテリア・セラピューティクス(IT)である。20年のノーベル化学賞を受賞したカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授が創始者のベンチャー企業だ。同社の特徴は肝臓や神経に指向性をもったリピッド・ナノ粒子(LNP)に、ガイドRNAとCRISPR-Cas9のmRNAを封じ込めたゲノム編集製剤である。点滴静注して標的臓器に送り込み、その臓器の細胞のゲノムをゲノム編集によって改変する。今回の3つの治験は遺伝子を破壊するゲノム編集製剤だ。