米ファイザーと米メルクは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)予防薬に関する新しいデータをそれぞれ発表した。RSVは秋に始まり冬にピークを迎える疾患で、今年も流行シーズンに突入した。全米感染症財団によるとRSVは1歳未満の小児の入院の一般的な原因で、年間8万人が入院している。このウイルスはまた、高齢者の呼吸器疾患の主な要因でもある。


 ファイザーは重症のために救急搬送された60歳以上の成人のレトロスペクティブ解析結果を発表。この研究集団でのワクチン「アブリスボ」投与は、最も重症のRSV症例に対して90%の予防効果を示したとした。24年6月に米国疾病予防管理センターは高齢者に対するRSVワクチン接種のガイドラインを変更、RSVワクチンは75歳以上のすべての高齢者と60〜74歳のハイリスク高齢者にのみ使用するよう限定した。アナリストはRSVの収益が65%近く減少すると予測している。


 販売見通しは悪化しているが、ファイザーはアブリスボのエビデンスベースを強化。8月には、免疫不全の成人でワクチンがウイルスに対する強力な中和反応を引き起こすことができると発表した。


 米メルクは、RSVの初シーズンを迎える健康な早産児と満期産児に単回投与した「クレスロビマブ」の後期第Ⅱ/Ⅲ相データを発表した。主要評価項目はRSVによる医療的下気道感染症(MALRI)を発症した参加者の割合で、下気道感染症(LRI)または重症度の指標を少なくともひとつ有するというもの。出生から1歳までの3600人以上の乳児治験の結果、投与後150日の時点でRSV関連MALRIはプラセボと比較して60.4%減少した。この時点でクレスロビマブはRSV関連入院を84.2%、RSV関連LRI入院を90.9%減少させた。


 米メルクは重症化リスクの高い乳幼児と小児を対象にした、クレスロビマブと「パリビズマブ」の安全性と有効性を比較した別の第Ⅲ相の追加解析も行った。その結果、RSVに関連したMALRIと入院の発生率は治療群間で同等だった。これらの結果から、クレスロビマブが安全で忍容性も高く、重篤な毒性シグナルや治療またはRSVに関連した死亡例は認められなかった。


 感染拡大が懸念されるエムポックスに関しては、デンマークのバイエルン・ノルディックのワクチン「ジンネオス」が青少年にも安全に使用でき、成人の効果と同等の抗体反応を誘導できることが、米国立衛生研究所(NIH)の資金提供による試験の中間結果で明らかになった。今回発表の研究は12〜17歳の青少年300人以上を対象にジンネオスを投与した第Ⅱ相で、18〜50歳の成人200人以上のワクチンの安全性と有効性試験から得たデータと比較したもの。


 NIHは、2回目の接種から2週間後にジンネオスが成人被験者グループで観察されたものと同等の抗体レベルを青少年被験者群が生成したと確認、210日目までワクチンの忍容性は良好だったとまとめた。世界保健機関(WHO)は12〜17歳の青少年に対するジンネオスの使用を承認済みで、研究者はウイルスにとくに弱いとされる年齢層の患者にとって、重要なマイルストンになると期待している。欧州医薬品庁は9月に青少年へのジンネオスの使用を許可したが、米国では承認されていない。バイエルン・ノルディックは計画した1000万回分の投与量を提供できれば、25年までに6億〜10億ドルの売上げが見込めるとする。


 NIHが発表したジンネオスの最新データに加え、ここ数ヵ月のいくつかの研究が、ワクチンの有効性や安全性だけでなく、効果の持続性や許容される投与量など、ワクチン業界の理解を深めるのに役立っている。24年4月、NIHの別の研究で、標準用量の5分の1しか投与しないジンネオスのレジメンでも、標準用量と同様の抗体反応が得られることが判明した。