世代間・制度間で大きなバラつき
保険外併用療養とは若干異なるものの、患者負担により直結する話題として講演テーマに追加したのが、高額療養費制度の見直しに関する議論だ。直近11月21日の社会保障審議会・医療保険部会でも、自己負担限度額の見直しが提案・議論されている。
表1が、現行の高額療養費制度の概要だ。年齢(69歳以下・70歳以上)と所得とで、月あたりの自己負担上限額が変動する。所得区分は、国民健康保険系であれば課税所得・社会保険系であれば標準報酬月額によって決まるが、ここでは概算の数値を示している。
通常の例としてよく紹介されるのは、69歳以下・区分ウの月額8万100円だが、所得次第で上限は25.3万円 (区分ア)から3.5万円(区分オ)まで変化する。70歳以上の場合は、上限は同じで下限が1.5万円に変化する。
医療保険部会の資料から、保険種別ごとに人数と割合を再整理したのが図1(69歳未満)と図2(70歳以上)だ。69歳以下について上限額の低い下位2区分の割合は、全体では43%(4160万人)だが、市町村国保では80%(1400万人)を占め、住民税非課税者も36%(680万人)に達する。対照的に、組合健保加入者では上位2区分が26%(750万人)を占める。所得をベースにしていることと、もともと市町村国保の加入者は高齢者が多いこととを考慮すれば当然だが、現行制度での上限額も世代間・制度間で大きなバラつきがあることが見て取れる。
図2の70歳以上では、上位3区分の現役並み所得の割合は、後期高齢者で7%(120万人)・70〜74歳でも11%(100万人)にとどまる。一方で、低所得者の割合は後期高齢者で41%(750万人)・70〜74歳で29%(260万人)にのぼる。区分の見直しを議論する際には、現行の構成比を考慮することが不可欠になる。