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さて、今回はエス・マックスのモニタリングデータの一部を紹介する。エス・マックスでは、さまざまな媒体のディテール(DTL)内容を医師から収集しているが、今回はその中で医師がガイドライン違反と感じたDTL(閲覧)数の割合を表にしたものである。用いたデータは22年の第3四半期から直近までの24年第3四半期までのデータ(9月のデータは15日まで)で、HP(100床以上)/GP(99床以下)すべての医師を対象としている。媒体に関しては、「MR」は直接面談とそれ以外(web、電話、メールなど)の合計、「MR以外」はMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)とMR以外のweb面談などの割合、「eプロモーション(eプロ)」は、エムスリー、メドピア、ケアネットなど、「講演会研究会」は、会場型とweb講演会(ハイブリッド型も含む)、製薬会社のホームページでまとめている。
全体的に1%未満の発現であり値が非常に少ないので、とても見にくいとは思うが3ヵ月間合算の実データで数件から多くて20件弱ぐらいである。多いか少ないかの判断は受け取り方だとは思うが、「ゼロではない」ということは知っていただきたいと思う。また、データを取得し始めた当初の20年頃からは明らかに発現数は減っており、落ち着いてきている22年のデータから示しているがそれでも数件は表れている。増減などの特徴的な傾向はここ2年ぐらいではみられないのでグラフにはしていない。ただ、増加しているときに医師が付けた製品とそのコメントを見ると、明らかに新発売や追加適応、後発品発売の時期付近であり、さらに競争が比較的激しい領域の製品で出現していることが多い。
また、注目していただきたいのは、MR以外でも医師は違反だと感じていることがある点だ。医師が違反とつけた事例を紹介すると、例えば製薬会社ホームページの記載で誤認のあるデータにつけられたことがある。それをメーカーに確認したところ、メーカー側はきちんと引用などについて触れていたのだが、その注釈の表示がかなり小さかったようで目にとどまらず誤解を与えてしまったのではないかとのこと。eプロでもその分野の専門医からのコメントでは、メーカーが記載している内容とこの間発表があった内容と違うといった内容もあった。これらは全て受け取り方の問題ではあるが、誤認されることのないようにしていくことも求められていると痛感した事例であった。
そして、姉妹紙RISFAXでも取り上げられ11月末にもネットなどで話題になっていた某社の講演会でのガイドライン違反の件もあるが、講演・研究会でも違反と感じた内容は発現している。もちろんメーカーのスライドチェックは行われているとは思うが、例えば、「分子構造の特徴からの作用機序の説明が異なる、その証拠がない」「どんな症例にも……というのは、エビデンスのこじつけではないか」といったコメントもあった。一方、「演者の治療経験からの話で苦労などもわかり勉強になった」などというコメントももちろんみられる。このあたりの線引きは、その場の流れもありメーカーとしては非常に難しいと感じた。
なお、別の21年3月に行った調査では、違反と感じたときに医師が取り得る行動は「当局の窓口に報告する」が約7%、「直接その場でMRに伝える」が約45%であった(「その製薬会社に報告」は13%、「何もしない」は42%)。
先述のXの話のように、MRも医師との信頼関係や共感などの寄り添った対応で、素早く大事(違反やクレーム)に気づき適切な行動が取れるだろう。MRに求められるのは、メーカーの窓口ではなく「心が通う」人間としての関係性構築が重要だと改めて思った。