RSVワクチン、抗菌薬耐性を減らす可能性


 英国健康安全保障庁とインペリアル・カレッジ・ロンドン、オックスフォード・ポピュレーション・ヘルスが注目の研究結果をまとめた。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症について、年間64万件の抗生物質処方につながる一方、新しいワクチンプログラムを含むRSV感染を減らすための介入が、抗生物質処方を減らし、抗生物質耐性を減らすのに役立つ可能性があると強調している。


 RSVはウイルス感染症であり、ほとんどの人は軽い呼吸器症状を引き起こす。多くの患者は1〜2週間で回復するが、乳幼児や高齢者など脆弱なグループでは、より重篤な疾患や入院を引き起こす可能性がある。抗生物質はウイルスには効かないが、感染症が細菌性かウイルス性かを判断できないことが多いため、プライマリ・ケア医(GP)が処方することがある。


 研究チームは、15〜18年までの一般診療における抗生物質処方と検査で確認された呼吸器感染症のデータを調査、英国GPでRSVに起因する抗生物質処方の割合を把握した。その結果英国GPにおける抗生物質処方の約2.1%がRSV感染症に起因するものであり、75歳以上の高齢者で処方されたものが最も多いことを発見した。


 この研究は9月にRSVワクチン接種プログラムが全国的に開始されたことに合わせて行われたもの。ワクチンは9月1日以降に75歳になる人に提供され、24〜25年シーズンには75〜79歳の人への単発キャンペーンが実施される。


 また、妊娠中の女性も28週を迎えるとワクチンが提供され、新生児に免疫が受け継がれる。分析によると、ワクチン接種の結果、12ヵ月未満の乳児のRSV罹患が7万人減少し、対象となる高齢者の罹患が6万人減少する可能性があると結論付けられた。


 研究の共著者であるルーシー・ミラー氏は、「今回の研究は、新しいRSVワクチンプログラムの導入が抗生物質処方と抗生物質耐性の減少に貢献する可能性があることを強調している」と説明した。


 英国民保健サービス(NHS)の予防接種とスクリーニングのナショナルディレクターであるスティーブ・ラッセル氏は「私たちは、抗菌薬耐性が世界的な公衆衛生に対する大きな脅威であることを知っており、ウイルスで重篤な病気になる人の数を減らすことを含め、不必要な抗生物質の使用を削減するためにできることをすべて行うことが重要だ」とし、75歳以上の高齢者、妊娠28週以上の妊婦への接種を推奨した。


 抗菌薬耐性は世界的に公衆衛生に対する脅威のひとつであり、抗生物質耐性菌が出現するリスクを高める過剰で不適切な使用によって悪化している。今年初め、英国政府は国家行動計画を開始し、29年までに抗生物質の総使用量を5%削減することを目標に掲げた。


 19年時点の薬剤耐性菌による死亡数は世界で127万人と推定され、適切な対策を講じない場合には50年には年間191万人に達し、関連死は822万人に上るという予想もある。


 薬剤耐性は自然に発生するものだが、抗菌薬の不適切かつ過剰な使用はそのプロセスを加速させる可能性がある。新たな行動計画は英国が抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬を含む抗菌薬の使用を削減することを約束している。