医薬品卸業界には、医療機関の購入代行などを担う「MS法人」を経由して取引する商慣習が存在するが、ごく一部で崩れつつある。医療機関側の事情で「薬価差」が見込めないためだ。
「獨協メディカルサービス」は、獨協医科大学病院など同大学傘下の関連3施設の医薬品調達を担ってきたMS法人。これまで卸から医薬品などを購入し、関連3施設に供給してきたが、24年度以降は獨協メディカルを介さないかたちに切り替えたようだ。
「流通改善を背景に、卸がしっかり価格交渉するようになり、利ザヤが見込めなくなった獨協メディカルは撤退した」
大手卸関係者は、獨協メディカルから病院と直接、価格交渉・取引するよう連絡があったと話す。メーカー関係者は「獨協メディカルの経費を差し引くと利益が得られないから」と解説する。
ただ、MS法人は、医療機関にとっては、自ら行えない営利事業を代行してくれる立場。これが「トンネル会社」と呼ばれる所以だ。実際、安く、効率的に物品調達したい大学病院などがMS法人を活用しており、卸は商慣習として従わざるを得ない。卸がなんらかの手数料をMS法人に支払う微妙な取引もあるようだが、卸はなかなか病院側に対し、業界に根付く商慣習からの脱却を積極的に提案できずにいる。
ある大手卸幹部は、MS法人経由の取引は不透明なため「なくしていく」と誓っていた。反発する医療機関を説得する必要があるが、今のところ気運はない。