「災害拠点病院の移転予定地脇を流れる川の土砂からタリウムが検出された」というニュースが11月下旬に報道された。移転する新病院予定地とは千葉県船橋市が音頭を取って進める土地区画整理事業「ふなばしメディカルタウン構想」の目玉である「船橋市立医療センター」の建て替え予定地である。


 タリウムといえば、10年前、名古屋大学の女子学生が、高校生時代に同級生の男子生徒に、中学生時代には女子同級生に硫酸タリウムを飲ませたことが発覚した事件や、22年に不動産会社経営者が立命館大学の女子学生にタリウムを飲ませて殺害し、叔母にもタリウム中毒の脳炎を起こさせて、貸しビル会社を乗っ取った事件で世間を驚かせた毒物だ。


 いや、タリウムだけではない。移転を懸念する市民団体が東京農工大学に依頼して医療センターの移転予定地に隣接する念田川の上流4ヵ所の汚泥を調べたら、病院に最も近い個所から「タリウムは自然界に存在する値を1とした時の28.1倍、鉛はなんと62.5倍も検出された」というのだ。


 3次救急病院は大量の水を使う関係上、どこも地下水を利用するし、災害拠点病院は災害時に備え、受水槽に3日分の水を確保することが指定要件にされている。敷地脇の川の汚泥からタリウムが、鉛が検出されたとは、移転計画を揺るがす事態だ——。