さて、日薬学術大会では、従来のような薬剤師が患者から単に聞き取るという行為だけでなく、支援システムを用いたフォローアップで成果を出したという研究発表が複数あった。それぞれ真剣に取り組んでいることが印象的だった。紙幅の都合ですべては紹介できないが、2つ示したい。
まずはカケハシ提供の「Pocket Musubi」である。このアプリは患者にLINE経由でフォローメッセージを送信できるほか、患者の服薬状況からフォローすべき患者をスクリーニングし、薬剤師が適切なアクションを負荷なく行えるようにする「服薬期間中フォロー機能」や、患者が来局前に処方箋の画像を送って薬局内の待ち時間を短縮することができる「処方箋送信機能」などを有する。
次に「フォロナビ」(ユニケソフトウェアリサーチ)だが、これもLINEを活用する。服薬フオローアップ支援システムで電子薬歴と連動するほか、処方薬や疾患に応じた指導コンテンツがあり、より効果的な服薬フォローアップが可能となる。フォローアップ対象になった場合は、電子薬歴の専用フォームにフォローアップ予定や計画を入力。さらに、来局リマインド・医師への報告まで、電子薬歴と連携した内容が示される(患者と薬剤師のやりとりがそのまま残る)ので、システムを効果的に利用できるようだ。
「服薬指導支援システム『フォロナビ』を活用した 吸入指導フォローアップに関する有用性の検証」と題した薬剤師の論文がある。『医薬品情報学』21年23巻2号72〜81頁で、著者は針谷峻平氏、田中怜氏、関谷秀鹿、村恵明氏だ。
少々抜粋して紹介する。
吸入指導は、窓口での説明に時間がかかる事項であり、各社のモデル器を揃えておくことが望ましい。患者用の指導箋や説明書があるが、最近は自分のペースで見れる動画などのほうがわかりやすい。動画に沿って一緒に確認することによって、どこで躓くか、または使い方の失敗・わからなくなったのかがわかる。
それでも高齢者はLINEを全員が使えるかどうかはまだ検証が必要である。とくに目が悪くなっている高齢者はどのような資材や容器の使い方も課題があるのだが、薬剤師がいくつかの方法(電話など)を組み合わせて、初期導入をフォローアップすべきだ。またフォローアップ期間はどのくらいか、という点も今後議論になってくるだろうが、個々の薬剤師や患者との関係に由来すると思われる。
これからは、医薬品と機器を併用するケースが多くなることは確実だ。機器使用のコンプライアンスも含めて、薬剤師のきめ細かな関与が期待される。患者の年齢や治療以外の要素も提供しながら継続性を引き出す。そのための仕掛けを薬剤師がぜひ考えてほしい。