製薬企業と、患者支援やアドボカシーなどの活動を担う患者団体とは、切っても切れない関係にある。ところがこれまでの製薬マネープロジェクト「Yen for Docs」には、そこの金銭関係が抜け落ちていた。


 我われがコラボするバース大学のピョートル・オジエランスキー博士らの研究によると、製薬企業から患者団体への資金提供は、英国(12〜16年:約98億円)、スウェーデン(14〜19年:約12億円)、デンマーク(14〜19年:約13億円)で、主にがんなどの商業的に重要な分野に集中していた。これらの金銭関係は、団体の活動内容や優先順位に影響を与える可能性が指摘されている。


 そこで今回、日本の患者団体と製薬会社の金銭関係について調査を行った。


 対象としたのは、18年度に製薬企業から患者団体に支払われた寄付金等である。調査の結果、600以上の団体が製薬会社57社から総額約2億7200万円の支援を受けていた。これは人口1人当たりの年間支援額で約3円に相当し、英国(約30円)、スウェーデンおよびデンマーク(約20円から40円)と比較すると、極めて少額だ。


 ただ、金額が少ないとはいえ、患者団体に対する支援に製薬企業側の経営的な思惑がまったくなかったとは言い切れない。


 と言うのも、支払いの大部分は、製薬会社の治療薬ポートフォリオと一致していたからだ。上位10社について、主要な10分野での金銭の支払いについて調べたところ、支払いがあった46のケースのうち、34(74%)で製薬企業が商品を開発していた。例えば、昨今GLP│1受容体作動薬で知名度が上昇したノボノルディスクは、糖尿病治療分野の主要な製薬会社であり、その資金提供は糖尿病関連の患者団体に集中していた。