24年の薬価差は、過去最小の「約5.2%」まで縮小した。厚生労働省はその理由として、物価高に伴う仕切価上昇を受けた卸の販売価格上昇、単品単価交渉を求める流通改善ガイドライン改訂の効果があった、などとメディアにレクチャーしたが、ミクロな視点で見ると、そんな美しい話はない。メーカーの強烈な「薬価防衛」が浮かび上がってくる。
「事前に決めた価格より1円でも安く売ると、本社からすぐに価格訂正要求が入る」
そうぼやくのは、大手卸の営業幹部。とくに最小限の卸で流通させる「限定流通」の製品で「口うるさく言われる」と解説する。
なぜか。毎年薬価改定で切迫するメーカーは、コスト削減のため容赦なく卸との取引を打ち切っており、「安売りするとメーカーに次から選ばれなくなる」からだ。取引停止を回避したい卸が「メーカーの意向を汲んで振る舞う」構造ができあがっている。
レアケースだが「薬価差圧縮に応じたリベートをつける露骨なメーカーもいる」(前出の大手卸営業幹部)という。
程度の差こそあれ「薬価防衛」に熱心なのは、どこのメーカーも同じだ。ある外資系メーカー関係者は、自社製品の「価値を浸透させる」「価値を維持する」名目で、卸にアローアンスを支払っていると明かす。他社も同様の流通政策を展開しており、常に「どのような名目(のリベート・アローアンス)にしたらいいか」頭を悩ませている。「流通改善」の美談などあるわけがない。