外来の医療現場で一番騒々しいのは小児科だ。1回でも注射をされた経験をすると、病院へ行くとわかった時点で泣きが始まる。この問題の根元である注射針について、極細にし無痛化しようとする研究開発が近々実現するかもしれない。


 このヒントは蚊だ。その針は7本の唇や顎などの束で、何と直径0.05ミリ。皮膚の痛みを感じる神経間隔は1ミリで、それよりはるかに細く、回転させて刺すという巧妙さだ。


 開発品は世界最小の直径0.09ミリで回転させて差し込む。開発は関西大学の青柳誠司教授らだ。


 生物が持つ構造や機能、生産原理などからヒントを得て、生産現場に活かす方策は「生物模倣」と呼ばれ、これまでいくつも実用化されている。例えば、新幹線のパンタグラフはふくろうの羽を参考につくられ、走行時の騒音を大幅にカットすることに成功、併せて先端の特殊形態はカワセミにヒントを得ている。


 生き物のもつ不思議な能力について、その仕組みを明らかにすることは、人類の発展にすこぶる役立っており、今後も楽しみだ。