時感
中年の危機
先日、某社の説明会を聞いていると、他人事ではないと感じた。昨年、特別退職プログラムを実施し、今年はグローバル、DXIT人材などキャリア採用に力を入れているという。血の入れ替えだ。
会社が目標を実現するにあたって、もっともな取り組みだ。ただ、さえない中年記者の私は、もし某社にいたらどういう選択を迫られただろう、と勝手な妄想を膨らませた。例えば、グローバルという観点では、入社後、海外で取材できるよう英会話を習っていたが、いつの間にか遠ざかった。三日坊主の私はきっと某社ではお荷物扱いかな、と意味もなく焦った。
数日後、東京・日本橋を歩いていたら、浅黒い長身のアジア系の男性が近づいてきた。案の定「英語話せますか?」みたいなことを聞かれたが、ネイティブ並みの流暢さに、つい「ノー」と返事した。
すると彼はスマホを取り出して、高速でしゃべりだした。一息ついて私の目前に画面を差し出すと、日本語が並んでいた。翻訳機能だ。ただ画面には「あなたの額がわかる」と謎の一文が記されていた。意味がわからない。私が呆気に取られてもなお彼は話し続け、画面には「あなたの明日は幸せが来るとわかる」と新たに表示された。
宗教の勧誘だな。思った通り、彼は「手のひらを見せて」と畳みかけてきたので、さすがに無視して、その場を立ち去った。しかし、歩いて落ち着きを取り戻すと、何かのネタになったのでは、とまさかの後悔の念が押し寄せてきた。
あれこれ不安に駆られる中年を「ミッドライフクライシス」というらしい。自分もその類かもしれないが、近年、業界内では社員の身の振り方を迫る発表が多い。とくに今年はたくさんの退職のご挨拶をいただいた。おそらく私の比ではない不安を抱えていると思われますので、変な輩に絡まれないようご用心ください。 (坂口)