■スタチンが入っていた紅麹
品質管理の面で思い起こされるのは、小林製薬の紅麴サプリ事件。工場で製品に青カビが混入したことで、毒性のある「プベルル酸」がつくられ死者や健康被害が発生した。
本書にも紅麴サプリ事件については1章を割いて詳細を解説しているが、気になったのは品質管理とは別の問題点、〈米紅麹には医薬品としても販売されているモナコリンKが入っている〉ことだ。
モナコリンKは高コレステロール治療薬のロバスタチンと同じ物質である。そのまま機能性表示食品として届け出すれば、医薬品を含む健康食品と判定して届け出は受理されないが、〈届け出た有効成分名は米紅麹ポリケチドだったので消費者庁は問題としなかった〉という。
時折、ステロイドやバイアグラの成分を含む「健康食品」がニュースになるケースがあるが、〈医薬品が医薬品名で届けたらダメなのに、医薬品を含む総称名なら機能性表示食品の場合OK〉ということだ。
この問題については、一部の学者や医療関係者、メディアが問題視していたが、「犯人」がプベルル酸に特定されたことで雲散霧消した感もある。しかし、他にも合法的に医薬品成分を含む健康食品の存在について指摘する声も上がっている。
消費者は「何だか体によさそうなもの」が大好きだ。安全な商品が並び、消費者が適切に購入、摂取できる仕組みの構築は不可欠だが、そもそも「健康食品」という名称が誤解や過剰な期待を生む原因になっていないだろうか? 改めて健康食品業界の課題を再認識させられた1冊だった。(鎌)
<書籍データ>
長村洋一著(講談社990円)