では、ほかにどんな原因が考えられるのか。ひとつは「高齢者」だ。「概要」で人口1人当たりの医療費を見ると、65歳未満が20万9500円なのに対し、65歳以上は77万5900円と、3.7倍にも跳ね上がる。
そしてもうひとつ興味深いのが、都道府県別にみた人口1人当たり国民医療費だ。埼玉(33万2000円)、千葉(33万4100円)、神奈川(33万8400円)など、関東に医療費の低いところが多い一方で、高知(47万8900円)、鹿児島(45万6500円)、徳島(44万8400円)と、地方に医療費の高いところが目立つ。
実は人口当たりの病床数が、埼玉、千葉、神奈川は少なく、高知や鹿児島、徳島は多いのだ。ベッドが空いていると、病院はそれを埋めるために、患者を入院させる。とくに高齢者が入院の対象となり、それが医療費増大の要因になっている可能性が高いことがわかる。
高齢になると医療依存度が上がるのは致し方ない面がある。だが、高齢者を医療中心ではなく、看護や介護、そして地域で支えるという仕組みにシフトしなければ、医療費の膨張は抑えられないのではないか。それを考えても、高額療養費制度を本当に必要としている若いがん患者や難病患者ばかりを医療費抑制のターゲットにするのは、やはり間違っている。