我われ誰でもが必ず迎える死。人生最後の時間は穏やかに過ごしたい。この一縷の望むを託すのが安楽死という選択である。これを最初に立法化した国はオランダだが、2019年の安楽死数は6361件であり、人口比で日本に換算すると約4万8000件にもなる。
制度化されていない日本ではあるけれども、さまざまな分野で、実質的に安楽死の方向をめざした医療サポート体制が見られるようになってきているのは、実に歓迎すべきことだ。
動物は口から物が食べられなくなったら死ぬ運命にあるが、人間とて同じこと、点滴や経管栄養、胃瘻などの人工栄養を続けても結局は絶食で亡くなる運命にある。
日本は世界一の胃瘻大国で、年間20万人もいるが生存期間中央値は約1年半でしかない。
問題は最後の闘病姿勢であり、1日でも長生きしようとすればするほど苦しむことになる。老いや死と冷静に向き合わずに先延ばしする医療から脱却し、家族や医療従事者ではなく、患者自身にとっても最善を提供できる医療が今、目前に用意されてくれるようになっている。