■ロスジェネは介護も危うい


 これからの問題として大きいのは何と言っても「世代間の格差」だろう。


 団塊の世代と並んで高齢化の大きな山となる団塊ジュニア世代に介護が必要になる2050年以降には、地域の格差、失われた世代の蓄財の不足、医療・介護・年金など社会保障関連の財源不足、下の世代の少子化に伴う介護の担い手不足など、介護を巡る諸問題が現在をはるかに上回るレベルになっている可能性が高い。


 医療と介護の連携強化やICTの導入による効率化、資格制度の見直し、外国人介護士の増加、支援ロボットの導入など、できることはまだまだあるが、マクロレベルの大きな変化にどこまで対応できるのだろうか?


 介護を見据えて個人レベルでできることとしては、まず「かかりつけ医」を見つけておくこと。


 介護認定などで突然シャキッとする高齢者のエピソードは「定番」だが、〈普段から主治医(かかりつけ医)とつきあって通院する医療機関が定まっているか否かによっても、介護生活は大きく変わる〉という。


 そして、〈若い時から人間関係の重要性を認識し「人付き合い」を心がけておく必要がある〉。特に気を付けたいのは男性だ。学歴や現役時代の職歴にこだわって、デイサービスや高齢者施設で周囲に打ち解けない高齢男性は珍しくない。介護施設でお気に入りの仲間たちと「ガールズトーク」を繰り広げる女性陣に対し、ポツンとひとりの男性高齢者はよくある風景だ。


 著者が長年の経験から、介護生活に大きな影響を与えると考えているのが、介護を受ける人の「人間性」や「人柄」だという。親族や友人、介護職員が気持ちよく支えてくれるほうが介護の質は上がるのは容易に想像がつく。


 ちなみに、十分な蓄財をしていても、〈過剰なまでの「ケチ」になると親族にさえ敬遠されて支援を得づらくなる〉という(高齢者でなくても同じだが……)。


 著者は介護予防として元気なうちは働くことを進めているが、社会性を保ちながら稼ぐという意味でも働くことは有効なのかもしれない。人柄がよくてケチではなくて、働き続けて介護に備える……。これからの高齢者に悠々自適はないのかもしれない。(鎌)


<書籍データ>

介護格差

結城康博著(岩波新書1100円)