時流遡航
夢想愚考―わがこころの旅路
第6回 ─川の流れに想うこと─
ジャーナリスト 本田成親
2017年4月15日号
老齢の域に達した今、改めて独り静かに川辺に佇み、眼下を流れ去る水の動きにじっと見入っていると、若い時代にはその意味など深く問いかけることなどなかった情景が次々に脳裏をよぎっていく。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」という書き出しで始まる鴨長明の方丈記の世界が今さらながら胸に迫ってくる有様なのだ。 川の源流は青く澄んで美しい。清冽な水の流れは細くて狭くはあるけれど、狂おしいまでに激しい勢いをなして急峻な谷間を一息に駆け下る。昨今たまたまそんな源流域を訪ねたりする機会があると、遠の昔に忘却の彼方に押しやっていたはずの記憶が蘇りハッとさせられることがある。体内に澄み切った水が流れていた頃の想い出が美しく、懐かしく、そして、ちょっぴり気恥ずかしいかたちをとって立ち現れるからである。 しかしながら、海辺に近い川口一帯の風景も...
老齢の域に達した今、改めて独り静かに川辺に佇み、眼下を流れ去る水の動きにじっと見入っていると、若い時代にはその意味など深く問いかけることなどなかった情景が次々に脳裏をよぎっていく。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」という書き出しで始まる鴨長明の方丈記の世界が今さらながら胸に迫ってくる有様なのだ。 川の源流は青く澄んで美しい。清冽な水の流れは細くて狭くはあるけれど、狂おしいまでに激しい勢いをなして急峻な谷間を一息に駆け下る。昨今たまたまそんな源流域を訪ねたりする機会があると、遠の昔に忘却の彼方に押しやっていたはずの記憶が蘇りハッとさせられることがある。体内に澄み切った水が流れていた頃の想い出が美しく、懐かしく、そして、ちょっぴり気恥ずかしいかたちをとって立ち現れるからである。 しかしながら、海辺に近い川口一帯の風景もまた
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