読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
ミスに向き合うことで紡がれる医療技術
第64回
鍛冶孝雄
2017年1月1日号
学生時代、事業所が使う精密機械の修理のアルバイトをしたことがある。読書子の私は理系ではない。面接では、いくつか機械を見せられたが、とても自分にはできないと帰ろうとすると、主任技師さんに「大丈夫、3日もあれば覚えられる。君にこの機械のすべてを知ってくれとは思っていないよ」とにこやかに説得された。言葉に嘘はなく、3日もすると2機種ほどの修理のポイントを覚えた。ただ、「実は向いているのではないか」と勘違いはしなかった。勘違いすると、すぐにミスしてしまう、という予感があったからだ。
同僚に中学を卒業したばかりの少年がいた。定時制高校に通う真面目な子だったが、その少年は、どうしても簡単な修理技術が覚えられない。彼は私をいつも感動的な目で見ていたらしく、その会社への正社員就職を勧めた。しかし、失敗ばかりする少年のほうが将来は絶対に優...
学生時代、事業所が使う精密機械の修理のアルバイトをしたことがある。読書子の私は理系ではない。面接では、いくつか機械を見せられたが、とても自分にはできないと帰ろうとすると、主任技師さんに「大丈夫、3日もあれば覚えられる。君にこの機械のすべてを知ってくれとは思っていないよ」とにこやかに説得された。言葉に嘘はなく、3日もすると2機種ほどの修理のポイントを覚えた。ただ、「実は向いているのではないか」と勘違いはしなかった。勘違いすると、すぐにミスしてしまう、という予感があったからだ。
同僚に中学を卒業したばかりの少年がいた。定時制高校に通う真面目な子だったが、その少年は、どうしても簡単な修理技術が覚えられない。彼は私をいつも感動的な目で見ていたらしく、その会社への正社員就職を勧めた。しかし、失敗ばかりする少年のほうが将来は絶対に優秀な
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