医薬経済オンライン

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読む医療—医師が書いた本の斜め読み—

「魔法の杖」をほしがらない精神療法

第61回

鍛冶孝雄

2016年11月15日号

 9月15日号で「挫折を知らない」人は、どうやらいい意味で「鈍感力」の強い人らしいと紹介した。読書子の私は、挫折を何度か味わったと思っているし、鈍感力に優れているという自覚もない。こうした自己採点は、周囲の目とは違うかもしれない。実は鈍感な人間だと思われているのではないか、と考えると複雑な気分だ。  だが、どう考えても「鈍感力」に優れた人など滅多にいない。多くの人が挫折を知り、悩む人もたくさんいる。最近では、心を病むほどに悩む人が増えていることも、さまざまな情報から窺い知れる。「うつ」の増加はその典型だろう。  このコラムでも、精神疾患系の書籍を何回かとり上げた。書店に行けば、「うつ」をはじめ、「心の病」に関する本が溢れている。誤解を恐れず、率直な印象を記せば、現代の情報過多のなかでつくられている病と感じられなくも...  9月15日号で「挫折を知らない」人は、どうやらいい意味で「鈍感力」の強い人らしいと紹介した。読書子の私は、挫折を何度か味わったと思っているし、鈍感力に優れているという自覚もない。こうした自己採点は、周囲の目とは違うかもしれない。実は鈍感な人間だと思われているのではないか、と考えると複雑な気分だ。  だが、どう考えても「鈍感力」に優れた人など滅多にいない。多くの人が挫折を知り、悩む人もたくさんいる。最近では、心を病むほどに悩む人が増えていることも、さまざまな情報から窺い知れる。「うつ」の増加はその典型だろう。  このコラムでも、精神疾患系の書籍を何回かとり上げた。書店に行けば、「うつ」をはじめ、「心の病」に関する本が溢れている。誤解を恐れず、率直な印象を記せば、現代の情報過多のなかでつくられている病と感じられなくもな

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