時流遡航
回想の視座から眺める現在と未来
第33回 ─父子寮に垣間見た困窮時の父性本能の悲しさ─
ジャーナリスト 本田成親
2016年9月1日号
父子寮汐崎荘へボランティア活動に出向くようになって程なく、私は、窮状に追い詰められた場合に露わになる「男」というものの本性を厭と言うほど思い知らされる羽目になった。まだ学生に過ぎなかったが、すでに成人男子ではあったので、その折に受けた衝撃のほどはひとかたならぬものだった。
極度の経済的な苦しさのゆえに各地の母子寮に身を寄せる母子家庭では、ほとんどの母親が、たとえ後ろ指を差されるような仕事に就こうとも、子どもだけは必死になって育てようとしていたものである。母親がわが子を食い物にするような例外的な母子家庭も存在はしたものだが、そのような家庭の割合は極めて低かった。
だが、困窮し果てて父子寮を頼る父子家庭の状況は、母子寮の家庭のそれとはまったく逆のものだった。ほとんどの父親が強権を揮いながら、子どもらに諸々の不...
父子寮汐崎荘へボランティア活動に出向くようになって程なく、私は、窮状に追い詰められた場合に露わになる「男」というものの本性を厭と言うほど思い知らされる羽目になった。まだ学生に過ぎなかったが、すでに成人男子ではあったので、その折に受けた衝撃のほどはひとかたならぬものだった。
極度の経済的な苦しさのゆえに各地の母子寮に身を寄せる母子家庭では、ほとんどの母親が、たとえ後ろ指を差されるような仕事に就こうとも、子どもだけは必死になって育てようとしていたものである。母親がわが子を食い物にするような例外的な母子家庭も存在はしたものだが、そのような家庭の割合は極めて低かった。
だが、困窮し果てて父子寮を頼る父子家庭の状況は、母子寮の家庭のそれとはまったく逆のものだった。ほとんどの父親が強権を揮いながら、子どもらに諸々の不法な
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