読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
「がんと闘う」ことを勧めるのは医師の権利と義務
第53回
鍛冶孝雄
2016年7月15日号
9歳の頃だったか。育った街の一番賑やかしい場所に、ある露天商が現れた。小太りの中年で、日焼けした顔の彼は、大きなカバンから写真パネルを10数枚ほど出して並べ、奇妙な抑揚をつけた言葉で寄生虫の恐ろしさを語り始めた。
主に子どもに飲ませる「虫下し」を売るのが目的だが、語りは見世物小屋の呼び込みとそっくりだった。写真は寄生虫で死んだという子どもの遺体。惨たらしく虫にまみれていた。当時、小学校で検便をすると3分の1の子どもが陽性だった。親にすれば説得力のある写真と啖呵だが、実際にはその光景が珍しいだけで、売れているところを目撃した記憶はない。健康や衛生に関する商品が、カルト的なやり方で販売されているのを見たのはそれが最初で最後だ。
このところの近藤誠氏の著書、『患者よ、がんと闘うな』と、それに続く同氏のやや過激なタイト...
9歳の頃だったか。育った街の一番賑やかしい場所に、ある露天商が現れた。小太りの中年で、日焼けした顔の彼は、大きなカバンから写真パネルを10数枚ほど出して並べ、奇妙な抑揚をつけた言葉で寄生虫の恐ろしさを語り始めた。
主に子どもに飲ませる「虫下し」を売るのが目的だが、語りは見世物小屋の呼び込みとそっくりだった。写真は寄生虫で死んだという子どもの遺体。惨たらしく虫にまみれていた。当時、小学校で検便をすると3分の1の子どもが陽性だった。親にすれば説得力のある写真と啖呵だが、実際にはその光景が珍しいだけで、売れているところを目撃した記憶はない。健康や衛生に関する商品が、カルト的なやり方で販売されているのを見たのはそれが最初で最後だ。
このところの近藤誠氏の著書、『患者よ、がんと闘うな』と、それに続く同氏のやや過激なタイトル
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