明眸皓歯③─外車１台分で手に入れたもの

From Local to Global　私と公衆衛生

明眸皓歯③─外車１台分で手に入れたもの

第93回

日本尊厳死協会理事長　岩尾總一郎（元厚労省医政局長）

2016年7月1日号

「叔父さん、この際、歯を全部つくり変えませんか。インプラントなら100歳まで持ちますよ」「そんなに長生きするつもりはないよ。だが、楽しみはもう食うことだけだから、入れ歯では辛いものがあるなー」　私の歯の悪さは母親譲り。母親は晩年入れ歯が合わず、細菌性心内膜炎に感染、その後、心筋梗塞を起こして死亡した。私も現役時代、歯を磨くたびに出血した。当時の写真を見ると明らかに歯茎が腫れており、歯肉、歯槽に炎症があった。成人の歯は通常28本だが、私の歯は上下合わせて18本しかなかった。歯科医の従兄には義歯をつくってもらい重宝していたが、やはり手入れが煩わしい。　従兄は1944年生まれで私より3歳年上。数少ない男の係累なので、私は兄のように慕っていた。伯父は疎開先の群馬県吉井町で歯科を開業しており、職人気質で丁寧な仕事をすると評判だった。　だが、伯父は従兄が高... 「叔父さん、この際、歯を全部つくり変えませんか。インプラントなら100歳まで持ちますよ」「そんなに長生きするつもりはないよ。だが、楽しみはもう食うことだけだから、入れ歯では辛いものがあるなー」　私の歯の悪さは母親譲り。母親は晩年入れ歯が合わず、細菌性心内膜炎に感染、その後、心筋梗塞を起こして死亡した。私も現役時代、歯を磨くたびに出血した。当時の写真を見ると明らかに歯茎が腫れており、歯肉、歯槽に炎症があった。成人の歯は通常28本だが、私の歯は上下合わせて18本しかなかった。歯科医の従兄には義歯をつくってもらい重宝していたが、やはり手入れが煩わしい。　従兄は1944年生まれで私より3歳年上。数少ない男の係累なので、私は兄のように慕っていた。伯父は疎開先の群馬県吉井町で歯科を開業しており、職人気質で丁寧な仕事をすると評判だった。　だが、伯父は従兄が高校3

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