一筆入魂
非常時に被災地を走るランナーとの出会い
それぞれの思いを胸に踏み出す一歩
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2016年6月1日号
仙台市に住む五島政博氏は、あの日のことを鮮明に覚えている。
68歳ながら、ウルトラマラソンを年に何回も完走する伝説的なランナーだ。それでも11年3月11日の東日本大震災直後は、走る気にはなれなかったという。自分の住む内陸部は地震の被害だけですんだが、電気も通ってないし、物資も少ない。暗い部屋でガスコンロでの煮炊きを強いられていた。
日常の生活が戻りつつあった4月中旬、震災で止まったままだった自宅近くの新幹線の車両が撤去されたことがきっかけだった。
きちんと津波の被害を、この目で見届けよう。そう思って、久しぶりにランニングシューズを履いて広瀬川沿いを沿岸部に向けて走り始めた。
河口まで8キロほどだ。その中間辺りに来て愕然とした。田んぼには車が引っくり返ったままで、家屋の残骸が散らばる。いったい何人が命を落としたのだろう。
心に傷が残る被害を...
仙台市に住む五島政博氏は、あの日のことを鮮明に覚えている。
68歳ながら、ウルトラマラソンを年に何回も完走する伝説的なランナーだ。それでも11年3月11日の東日本大震災直後は、走る気にはなれなかったという。自分の住む内陸部は地震の被害だけですんだが、電気も通ってないし、物資も少ない。暗い部屋でガスコンロでの煮炊きを強いられていた。
日常の生活が戻りつつあった4月中旬、震災で止まったままだった自宅近くの新幹線の車両が撤去されたことがきっかけだった。
きちんと津波の被害を、この目で見届けよう。そう思って、久しぶりにランニングシューズを履いて広瀬川沿いを沿岸部に向けて走り始めた。
河口まで8キロほどだ。その中間辺りに来て愕然とした。田んぼには車が引っくり返ったままで、家屋の残骸が散らばる。いったい何人が命を落としたのだろう。
心に傷が残る被害を受
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