医薬経済オンライン

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一筆入魂

「事実って何だ」の思いに揺れたエイズ報道

元厚生省の遺言「安全という幻想」を読んで

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2016年4月15日号

 米国でエイズウイルスが血友病患者にも感染していることがわかった82〜84年に、厚生省(当時)の薬務局生物製剤課長だった郡司篤晃氏が書いた『安全という幻想—エイズ騒動から学ぶ』(聖学院大学出版社)を読んだ。  郡司氏は、血友病患者が使っていた非加熱濃縮血液製剤を介してエイズウイルスに感染する可能性を認識し、83年に専門医らを集めたエイズ研究班を設置して対応した厚生省の実質的な責任者だ。  その後、ウイルスに感染した血友病患者らが提訴したHIV訴訟や専門医らが逮捕される騒動のなかで当時の対応が問われ、郡司氏は責任追及の矢面に立たされた。新聞はこぞって非加熱製剤を使い続けるという判断をした厚生省とエイズ研究班の過誤を問う記事を書き続けた。  91年から4年間、厚生省を担当した私も、薬害エイズに関わってきた。取材の中心は、同じ厚生省を担当するI記者...  米国でエイズウイルスが血友病患者にも感染していることがわかった82〜84年に、厚生省(当時)の薬務局生物製剤課長だった郡司篤晃氏が書いた『安全という幻想—エイズ騒動から学ぶ』(聖学院大学出版社)を読んだ。  郡司氏は、血友病患者が使っていた非加熱濃縮血液製剤を介してエイズウイルスに感染する可能性を認識し、83年に専門医らを集めたエイズ研究班を設置して対応した厚生省の実質的な責任者だ。  その後、ウイルスに感染した血友病患者らが提訴したHIV訴訟や専門医らが逮捕される騒動のなかで当時の対応が問われ、郡司氏は責任追及の矢面に立たされた。新聞はこぞって非加熱製剤を使い続けるという判断をした厚生省とエイズ研究班の過誤を問う記事を書き続けた。  91年から4年間、厚生省を担当した私も、薬害エイズに関わってきた。取材の中心は、同じ厚生省を担当するI記者が担

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