回想の視座から眺める現在と未来

時流遡航

回想の視座から眺める現在と未来

第25回　─深川周辺での学生時代の生活を省みながら─

ジャーナリスト　本田成親

2016年2月15日号

　学生時代、東京都江東区深川牡丹3丁目の峯木さんという靴屋の2階の四畳半に間借りし、当時塩浜にあった東京シャーリングという鋼板切断加工専門の会社で夜警のアルバイトをやっていたという話は前にも書いた。京浜急行線大森町駅（東京都大田区）近くの「平凡荘2号室」という何とも洒落た名前の四畳半ボロアパートに住んでいた私が、深川牡丹にあるその部屋に転居したのは、夜警のバイト先に近いからというだけの理由で、とくにツテや縁故があったからではなかった。深川不動堂や辰巳芸者で知られる門前仲町近くの不動産屋でたまたま空き部屋を探し当て、そこに住みつくことになっただけのことである。　ただ、遠い日々の回想に浸るにつけても、ある意味で偶然ほどに人間の一生に大きな影響をもたらすものはないように思われる。社会人になって以降の私の人生行路においては、さまざ... 　学生時代、東京都江東区深川牡丹3丁目の峯木さんという靴屋の2階の四畳半に間借りし、当時塩浜にあった東京シャーリングという鋼板切断加工専門の会社で夜警のアルバイトをやっていたという話は前にも書いた。京浜急行線大森町駅（東京都大田区）近くの「平凡荘2号室」という何とも洒落た名前の四畳半ボロアパートに住んでいた私が、深川牡丹にあるその部屋に転居したのは、夜警のバイト先に近いからというだけの理由で、とくにツテや縁故があったからではなかった。深川不動堂や辰巳芸者で知られる門前仲町近くの不動産屋でたまたま空き部屋を探し当て、そこに住みつくことになっただけのことである。　ただ、遠い日々の回想に浸るにつけても、ある意味で偶然ほどに人間の一生に大きな影響をもたらすものはないように思われる。社会人になって以降の私の人生行路においては、さまざまな

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