読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
言葉の創造力が生み出す説得力
第38回
鍛冶孝雄
2015年12月1日号
養老孟司氏が、最近の新聞連載インタビューで、「メディアはずっと嘘をついている」として、上場企業はGDP(国内総生産)も雇用も全体の一部しか担っていないのに、メディアはそれが大半だと思わせていることを例に挙げている。
今回、取り上げる近藤誠医師の『近藤誠の家庭の医学』(求龍堂、15年刊)は、メディアが騒ぐ医療の「新常識」を説く、近藤氏の一連の著書の最新刊である。近藤氏は、1996年に『患者よがんと闘うな』(文藝春秋)を刊行して以来、すでに20年近くがん治療を中心にした論争の主役を担っている。問題提起あるいは医療不信への医師からの肯定的メッセージとも受け取れるが、出版系やテレビ受けするメディア的コンテンツのひとつとなっているのではないかとの印象も持つ。
総じて、医療・医学がいつまで経っても「途上の科学」、つまり試行錯...
養老孟司氏が、最近の新聞連載インタビューで、「メディアはずっと嘘をついている」として、上場企業はGDP(国内総生産)も雇用も全体の一部しか担っていないのに、メディアはそれが大半だと思わせていることを例に挙げている。
今回、取り上げる近藤誠医師の『近藤誠の家庭の医学』(求龍堂、15年刊)は、メディアが騒ぐ医療の「新常識」を説く、近藤氏の一連の著書の最新刊である。近藤氏は、1996年に『患者よがんと闘うな』(文藝春秋)を刊行して以来、すでに20年近くがん治療を中心にした論争の主役を担っている。問題提起あるいは医療不信への医師からの肯定的メッセージとも受け取れるが、出版系やテレビ受けするメディア的コンテンツのひとつとなっているのではないかとの印象も持つ。
総じて、医療・医学がいつまで経っても「途上の科学」、つまり試行錯誤も
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