読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
医療の進歩は途上にあることが忘れられる
第37回
鍛冶孝雄
2015年11月15日号
読み終わって、この本をこのコラムで取り上げるかどうか、かなり迷った。今回の郡司篤晃著『安全という幻想─エイズ騒動から学ぶ』(聖学院大学出版会、15年刊)である。理由は書かれていることの経緯を大体知っていたからであり、「騒動」の最中には、「騒がない」側に立っていたジャーナリストのひとりだったからである。いや。「騒げなかった」と言うほうが正しい。
ひとつだけ弁明すれば、「騒げなかった」だけに、いわゆるエイズ騒動の背景、また騒動の歪み自体も、かなり客観的に見ていたと記憶している。同書を読んで、改めて「やはりそうだったんだ」と思う箇所も多く、当時の自らを振り返って、「あったはずの課題」を処理しきれず、手をつけなかったことの無念さも残る。なお、残念ながら郡司氏は9月末に逝去された。
著者の郡司氏は、82年8月に当時の厚生省...
読み終わって、この本をこのコラムで取り上げるかどうか、かなり迷った。今回の郡司篤晃著『安全という幻想─エイズ騒動から学ぶ』(聖学院大学出版会、15年刊)である。理由は書かれていることの経緯を大体知っていたからであり、「騒動」の最中には、「騒がない」側に立っていたジャーナリストのひとりだったからである。いや。「騒げなかった」と言うほうが正しい。
ひとつだけ弁明すれば、「騒げなかった」だけに、いわゆるエイズ騒動の背景、また騒動の歪み自体も、かなり客観的に見ていたと記憶している。同書を読んで、改めて「やはりそうだったんだ」と思う箇所も多く、当時の自らを振り返って、「あったはずの課題」を処理しきれず、手をつけなかったことの無念さも残る。なお、残念ながら郡司氏は9月末に逝去された。
著者の郡司氏は、82年8月に当時の厚生省薬
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