時流遡航
回想の視座から眺める現在と未来⑭
第12回 ─穏やかな義父が心中深くに秘めた傷─
ジャーナリスト 本田成親
2015年9月1日号
北海道各地の広大な高原や平野部は今でこそ緑豊かな酪農地帯に変わっているが、パイロット・ファームなどと呼ばれていた草創期の開拓牧場で働く人々の生活は困窮を極めていた。あちこちのファームで一家夜逃げが頻繁に起こったりするほどにその暮らしぶりは悲惨なものだった。義父はそんな貧困家庭の女の子たちを優先的に国家公務員共済組合保養所「大鵬荘」の従業員として雇い、親身になって育て上げた。夜学に通わせたり通信教育を受けさせたりして彼女たちにはそれなりのことを学ばせ、結婚や転職を機に大鵬荘を去っていく場合でも、あれこれと世話を焼いていた。また、彼女たちが巣立っていったあとも、事あるごとに何かと相談に乗ったり面倒を見たりもしていたようである。
義父はよく従業員の女の子たちの実家に近況報告をかねて挨拶に出向いたりもしたものだった。そんな折な...
北海道各地の広大な高原や平野部は今でこそ緑豊かな酪農地帯に変わっているが、パイロット・ファームなどと呼ばれていた草創期の開拓牧場で働く人々の生活は困窮を極めていた。あちこちのファームで一家夜逃げが頻繁に起こったりするほどにその暮らしぶりは悲惨なものだった。義父はそんな貧困家庭の女の子たちを優先的に国家公務員共済組合保養所「大鵬荘」の従業員として雇い、親身になって育て上げた。夜学に通わせたり通信教育を受けさせたりして彼女たちにはそれなりのことを学ばせ、結婚や転職を機に大鵬荘を去っていく場合でも、あれこれと世話を焼いていた。また、彼女たちが巣立っていったあとも、事あるごとに何かと相談に乗ったり面倒を見たりもしていたようである。
義父はよく従業員の女の子たちの実家に近況報告をかねて挨拶に出向いたりもしたものだった。そんな折など
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