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一筆入魂

自閉症の息子と二人三脚でマラソン行脚

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2015年4月15日号

 記念すべき100回目のレースに、父が選んだのはフルマラソンだった。3月28日、伊豆大島の定期航路便が接岸する元町港の待合所脇のスタートライン。長野県東筑摩郡麻績村でケアマネジャーとして働く関崎豊さん(42)と、その長男で小学6年生の智琉君(12)の姿があった。ふたりで挑む初めてのフルマラソンだ。  智琉君は4歳の頃、自閉症と診断された。自閉症は個人差が大きい。活発な子もいれば、内に籠もる子もいる。小学校1年生のときだ。智琉君は落ち込むことが多くなった。よく泣いて、元気がない。豊さんが最も心配したのは、セルフ・エスティーム(自尊感情)を失ってしまうことだった。  集団やほかの子どもたちとの関係のなかで認められているかどうかは、無意識のうちに心を左右する。自分を肯定できないと、自信がなくなって落ち込んでいく。  豊さんは、褒めるように心掛けた。だが、何も...  記念すべき100回目のレースに、父が選んだのはフルマラソンだった。3月28日、伊豆大島の定期航路便が接岸する元町港の待合所脇のスタートライン。長野県東筑摩郡麻績村でケアマネジャーとして働く関崎豊さん(42)と、その長男で小学6年生の智琉君(12)の姿があった。ふたりで挑む初めてのフルマラソンだ。  智琉君は4歳の頃、自閉症と診断された。自閉症は個人差が大きい。活発な子もいれば、内に籠もる子もいる。小学校1年生のときだ。智琉君は落ち込むことが多くなった。よく泣いて、元気がない。豊さんが最も心配したのは、セルフ・エスティーム(自尊感情)を失ってしまうことだった。  集団やほかの子どもたちとの関係のなかで認められているかどうかは、無意識のうちに心を左右する。自分を肯定できないと、自信がなくなって落ち込んでいく。  豊さんは、褒めるように心掛けた。だが、何もし

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