避難所の「救護」か「家族」かで悩んだあの日
自分の子どもの心に深い傷跡
ノンフィクション作家・辰濃哲郎
2015年3月15日号
4年前のあの日、必死で被災者のために働いたつもりだった。だが、本当にそれでよかったのか、今になって、わからなくなっている。看護師である前に、子どもを抱える母親として、成すべきことがあったのではないか──。
11年3月11日、石巻市立雄勝病院のK看護師(38)は、夜勤明けの帰り、同僚看護師に声をかけた。
「地震が来たら逃げてね。患者を助けるなんて無理だから」
その2日前、大きな地震があった。ナースステーションの棚が倒れそうになるのを必死で抑えた。
「そんなの抑えるんじゃない。危ないじゃないか!」
見回りに来た鈴木孝壽副院長に注意された。地震が収まってから、Kさんは鈴木副院長に伝えた。
「子どもが保育所にいるんで、もしものときは迎えに行きたい」
鈴木副院長はこう答えた。
「いいよ、いいよ。家族のほうが大事なんだから」
11日の夜勤明け、同僚に「逃げて...
4年前のあの日、必死で被災者のために働いたつもりだった。だが、本当にそれでよかったのか、今になって、わからなくなっている。看護師である前に、子どもを抱える母親として、成すべきことがあったのではないか──。
11年3月11日、石巻市立雄勝病院のK看護師(38)は、夜勤明けの帰り、同僚看護師に声をかけた。
「地震が来たら逃げてね。患者を助けるなんて無理だから」
その2日前、大きな地震があった。ナースステーションの棚が倒れそうになるのを必死で抑えた。
「そんなの抑えるんじゃない。危ないじゃないか!」
見回りに来た鈴木孝壽副院長に注意された。地震が収まってから、Kさんは鈴木副院長に伝えた。
「子どもが保育所にいるんで、もしものときは迎えに行きたい」
鈴木副院長はこう答えた。
「いいよ、いいよ。家族のほうが大事なんだから」
11日の夜勤明け、同僚に「逃げて」
有料会員限定
会員登録(有料)
この記事をお読みいただくためには、会員登録(有料)が必要です。
新規会員登録とマイページ > 購読情報から購入手続きをお願いいたします。
※IDをお持ちの方はログインからお進みください
【会員登録方法】
会員登録をクリックしていただくと、新規会員仮登録メール送信画面に移動します。
メールアドレスを入力して会員登録をお願い致します。
1ユーザーごとの登録をお願い致します。(1ユーザー1アカウントです)
ログイン
会員登録