読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
医学教育で得た死生観が恋愛小説の途を拓く
第18回
鍛冶孝雄
2015年2月1日号
地方から東京の大学に進学した際、当初は下宿をした。今でいうホームステイのようなもので、どういうわけか家族の一員のようなかたちとなり、18歳の男子が当然のように憧れていた「1人暮らし」とは訳が違った。半年ほど経って、その不自由さが堪らなくなり、取るに足らない理由をつけて下宿先を脱出、都内の私鉄沿線にアパートの一室を借りた。
晴れて1人暮らしを始めたのだが、そのアパートの大家さんが60歳くらいの未亡人。アパート玄関脇の部屋にいて、住人の在宅状況をチェックしており、何くれとなく世話を焼きたがる人だった。とにかく若い人が好きで、幾度となく夕食をご馳走してくれた。到来物のお裾分けにも預かった。
正直にいえば、やや鬱陶しい気分もあったのだが、この大家の趣味が読書で、それも大の読書家だった。よく読み終えた小説雑誌、本の感想や...
地方から東京の大学に進学した際、当初は下宿をした。今でいうホームステイのようなもので、どういうわけか家族の一員のようなかたちとなり、18歳の男子が当然のように憧れていた「1人暮らし」とは訳が違った。半年ほど経って、その不自由さが堪らなくなり、取るに足らない理由をつけて下宿先を脱出、都内の私鉄沿線にアパートの一室を借りた。
晴れて1人暮らしを始めたのだが、そのアパートの大家さんが60歳くらいの未亡人。アパート玄関脇の部屋にいて、住人の在宅状況をチェックしており、何くれとなく世話を焼きたがる人だった。とにかく若い人が好きで、幾度となく夕食をご馳走してくれた。到来物のお裾分けにも預かった。
正直にいえば、やや鬱陶しい気分もあったのだが、この大家の趣味が読書で、それも大の読書家だった。よく読み終えた小説雑誌、本の感想や、新
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