読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
論争の「主役」だった森鴎外
第16回
鍛冶孝雄
2015年1月1日号
前号(14年12月15日号)は森鴎外の『高瀬舟』を取り上げ、ほぼ100年前から文学者としての鴎外が「安楽死」に関心を持っていたこと、鴎外自身が社会医学的な問題だと認識してこの作品を発表したことを紹介した。また、作品としての完成度は、米国でも高く評価され、しばらくは多くの教科書に採用されたりしたことを考えても、その水準の高さは言うまでもないだろう。だから、多くの読者が『高瀬舟』を知識としてすでに持っていることも当然だと思う。
しかし改めて、この作品を読み、さらに医師としての評価を見ると、鴎外は医師あるいは軍医の前に文学者だったのだと再確認することができる。
少し長いが、『高瀬舟』のなかから抜粋してみる。
「その日は暮方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄ってくる夏のあ...
前号(14年12月15日号)は森鴎外の『高瀬舟』を取り上げ、ほぼ100年前から文学者としての鴎外が「安楽死」に関心を持っていたこと、鴎外自身が社会医学的な問題だと認識してこの作品を発表したことを紹介した。また、作品としての完成度は、米国でも高く評価され、しばらくは多くの教科書に採用されたりしたことを考えても、その水準の高さは言うまでもないだろう。だから、多くの読者が『高瀬舟』を知識としてすでに持っていることも当然だと思う。
しかし改めて、この作品を読み、さらに医師としての評価を見ると、鴎外は医師あるいは軍医の前に文学者だったのだと再確認することができる。
少し長いが、『高瀬舟』のなかから抜粋してみる。
「その日は暮方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄ってくる夏のあたた
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