医薬経済オンライン

医療・医薬業界をさまざまな視点・論点から示すメディア

老医師のつぶやき

 『春との旅』と『東京物語』

第33回

吉原忠男(前埼玉県医師会長)

2015年1月1日号

 老後や介護の問題に触れるとき、どうしてもこの2つの映画を思い出してしまう。前者は激しく老後に突進していった話、後者はゆっくり駘蕩とした姿勢で老後に向かう話である。  小林政広監督(1954年生まれ)の『春との旅』は1、2年前に封切られたが、仲代達也が頑なな老人役を、徳永えりがその祖父を気遣う孫娘の役を、それぞれ好演していた。  映画の冒頭、荒れた冬の波が打ち寄せる崖下の海岸が映る。わずかな岩場に何軒かの粗末な建物がへばりついている。その1軒から怒った顔の老人が黒いオーバーを着て飛び出してくる。すぐ追いかけてリュックサックを背負った娘が出てくる。老人は杖を投げ捨てる。娘が拾って差し出すと、彼はまた投げ捨てた。  老人は脳梗塞かなにかの後遺症らしく半身が不自由のようだ。娘は、先天性股関節脱臼でもあったのかとも思わせる、いわゆるガニ股で歩く。徳永えり...  老後や介護の問題に触れるとき、どうしてもこの2つの映画を思い出してしまう。前者は激しく老後に突進していった話、後者はゆっくり駘蕩とした姿勢で老後に向かう話である。  小林政広監督(1954年生まれ)の『春との旅』は1、2年前に封切られたが、仲代達也が頑なな老人役を、徳永えりがその祖父を気遣う孫娘の役を、それぞれ好演していた。  映画の冒頭、荒れた冬の波が打ち寄せる崖下の海岸が映る。わずかな岩場に何軒かの粗末な建物がへばりついている。その1軒から怒った顔の老人が黒いオーバーを着て飛び出してくる。すぐ追いかけてリュックサックを背負った娘が出てくる。老人は杖を投げ捨てる。娘が拾って差し出すと、彼はまた投げ捨てた。  老人は脳梗塞かなにかの後遺症らしく半身が不自由のようだ。娘は、先天性股関節脱臼でもあったのかとも思わせる、いわゆるガニ股で歩く。徳永えりは、

有料会員限定

会員登録(有料)
この記事をお読みいただくためには、会員登録(有料)が必要です。
新規会員登録とマイページ > 購読情報から購入手続きをお願いいたします。
※IDをお持ちの方はログインからお進みください

【会員登録方法】
会員登録をクリックしていただくと、新規会員仮登録メール送信画面に移動します。
メールアドレスを入力して会員登録をお願い致します。
1ユーザーごとの登録をお願い致します。(1ユーザー1アカウントです)

googleAdScence