ラテン転々
バレンティン騒動
第3回
三山喬
2014年5月15日号
逃げ遅れた私は、1階にとり残されていた。先ほどまで皆がいたリビングルームの窓にはすべてブラインドが下ろされていたが、その窓枠を外側からゴンゴン叩く音が延々と聞こえる。 次の窓、そして次の窓と、叩きながら家の外をバレンティンが徘徊している。 私はブラインドの隙間から自分の姿が見えてしまってはまずいと思い、次の間に移動した。だが外側から叩く勢いで、留め金が外れたのか、1枚の窓が開く音がした。次の瞬間には、バレンティンがリビングにいた。 万事休す、である。 階段のすぐ下にいた私を睨みつけながらも、一言も発しないままバレンティンは、のしのしと2階へと上ってゆく。「そっちへ行くよ」 下から階上にそう伝えて、彼のあとを追うと、2階の廊下で長女を抱きかかえた妻カルラとバレンティンが睨み合い、その周りを妻の両親と叔母、私の取材助手が取り囲んでいた。「ここ...
逃げ遅れた私は、1階にとり残されていた。先ほどまで皆がいたリビングルームの窓にはすべてブラインドが下ろされていたが、その窓枠を外側からゴンゴン叩く音が延々と聞こえる。 次の窓、そして次の窓と、叩きながら家の外をバレンティンが徘徊している。 私はブラインドの隙間から自分の姿が見えてしまってはまずいと思い、次の間に移動した。だが外側から叩く勢いで、留め金が外れたのか、1枚の窓が開く音がした。次の瞬間には、バレンティンがリビングにいた。 万事休す、である。 階段のすぐ下にいた私を睨みつけながらも、一言も発しないままバレンティンは、のしのしと2階へと上ってゆく。「そっちへ行くよ」 下から階上にそう伝えて、彼のあとを追うと、2階の廊下で長女を抱きかかえた妻カルラとバレンティンが睨み合い、その周りを妻の両親と叔母、私の取材助手が取り囲んでいた。「ここを誰
有料会員限定
会員登録(有料)
この記事をお読みいただくためには、会員登録(有料)が必要です。
新規会員登録とマイページ > 購読情報から購入手続きをお願いいたします。
※IDをお持ちの方はログインからお進みください
【会員登録方法】
会員登録をクリックしていただくと、新規会員仮登録メール送信画面に移動します。
メールアドレスを入力して会員登録をお願い致します。
1ユーザーごとの登録をお願い致します。(1ユーザー1アカウントです)
ログイン
会員登録