一筆入魂
最後の夢を見据えた「親父の遺言」
家族を犠牲にしても描きたかったこと
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2014年2月1日号
父親らしいことをしてもらった記憶は、ほとんどない。 私がまだ幼少の頃、新聞記者だった父の帰宅は、遅かった。たまに早く帰ってきたとしても、食卓に座って夕食をとる父の関心は、テレビのプロ野球中継だった。 「勉強はどうだ」とか、「成績は?」などという小言がないのはよかったが、逆に私と弟の成長や、ふだんの生活については、まったく関心がなかった。 小学生までは、団地に住んでいたから、学校帰りは近所の子供と缶蹴りや三角ベースの野球、コマ回しやビー玉など、遊ぶことには事欠かなかった。だが、休日や夏休みになると、みんな家族単位で遊ぶから、私は家に閉じこもらざるを得なかった。 小学生の頃、テレビアニメの「巨人の星」に出てくる主人公、「飛雄馬」と、その父「一徹」の特訓風景に憧れた。母親にそのことを伝えると、父は初めて空き地でキャッチボールをしてくれた。だ...
父親らしいことをしてもらった記憶は、ほとんどない。 私がまだ幼少の頃、新聞記者だった父の帰宅は、遅かった。たまに早く帰ってきたとしても、食卓に座って夕食をとる父の関心は、テレビのプロ野球中継だった。 「勉強はどうだ」とか、「成績は?」などという小言がないのはよかったが、逆に私と弟の成長や、ふだんの生活については、まったく関心がなかった。 小学生までは、団地に住んでいたから、学校帰りは近所の子供と缶蹴りや三角ベースの野球、コマ回しやビー玉など、遊ぶことには事欠かなかった。だが、休日や夏休みになると、みんな家族単位で遊ぶから、私は家に閉じこもらざるを得なかった。 小学生の頃、テレビアニメの「巨人の星」に出てくる主人公、「飛雄馬」と、その父「一徹」の特訓風景に憧れた。母親にそのことを伝えると、父は初めて空き地でキャッチボールをしてくれた。だが
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