この国につけるクスリ 社会保障よもやま話
産科医療補償制度への疑問
東京福祉大学・大学院副学長 喜多村悦史
2013年10月1日号
医療行為は、その特質からして、医療者がどれだけ熟達し、かつ真摯に取り組んだとしても、一定確率での事故は避けられない。同時に、医療者の未熟や不注意、過失による事故もないとは言えない。 謂われなき損害を受けた立場からすれば、民事法に基づき、加害者に損害賠償請求する権利がある。かつては垣根が高いとされてきた医療訴訟も、近年ではある意味一般化した感がある。とくに顕著なのが産科分野で、「健全な新生児が生まれて当たり前、何か不都合があれば提訴」という世相となった。そうした、医療の不確実性を度外視して「結果責任」を問う圧力が、産科医院数減少の大きな理由とされている。 そこで、産科医院や医師を不当な賠償請求から守る趣旨で、医師の過失の有無を問わずに事故被害者への経済補償を行う制度が、09年から導入された(産科医療補償制度)。分娩に伴う事故により重度の脳...
医療行為は、その特質からして、医療者がどれだけ熟達し、かつ真摯に取り組んだとしても、一定確率での事故は避けられない。同時に、医療者の未熟や不注意、過失による事故もないとは言えない。 謂われなき損害を受けた立場からすれば、民事法に基づき、加害者に損害賠償請求する権利がある。かつては垣根が高いとされてきた医療訴訟も、近年ではある意味一般化した感がある。とくに顕著なのが産科分野で、「健全な新生児が生まれて当たり前、何か不都合があれば提訴」という世相となった。そうした、医療の不確実性を度外視して「結果責任」を問う圧力が、産科医院数減少の大きな理由とされている。 そこで、産科医院や医師を不当な賠償請求から守る趣旨で、医師の過失の有無を問わずに事故被害者への経済補償を行う制度が、09年から導入された(産科医療補償制度)。分娩に伴う事故により重度の脳性麻
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