老医師のつぶやき
選挙の争点はぼやけて
第16回
吉原忠男(前埼玉県医師会長)
2013年8月1日号
酷暑が続いている。高年の患者さんがほうほうの体で診察室に来る。「暑いですねぇ」「まったく、もう何も考えられません」「水気だけはとってくださいね。できればスポーツドリンクがいい」「うーん、あれは好きじゃないの」「でもあれは点滴みたいな成分だから」「そうなの?わたしゃあ、お茶のほうが好きなんだけど、そうするか」 そんな話をしながら診察を終わり、私は遠慮がちに聞いてみる。「選挙、行くの?」 そのおばあさんは(と言っても私より少し年上なだけだが)、にこりとして、「わかってますよ。待合室に貼ってあるポスターの2人でしょ」「そうそう。あまり暑かったら無理しなくていいからね。今度から名前は2つ書くんだからね」「はいはい」。付き添いなしでは投票所へ行けないようなお年寄りだから、強制はできない。 昔、医者は往診カバンに200票は入れて歩いている、と言われて...
酷暑が続いている。高年の患者さんがほうほうの体で診察室に来る。「暑いですねぇ」「まったく、もう何も考えられません」「水気だけはとってくださいね。できればスポーツドリンクがいい」「うーん、あれは好きじゃないの」「でもあれは点滴みたいな成分だから」「そうなの?わたしゃあ、お茶のほうが好きなんだけど、そうするか」 そんな話をしながら診察を終わり、私は遠慮がちに聞いてみる。「選挙、行くの?」 そのおばあさんは(と言っても私より少し年上なだけだが)、にこりとして、「わかってますよ。待合室に貼ってあるポスターの2人でしょ」「そうそう。あまり暑かったら無理しなくていいからね。今度から名前は2つ書くんだからね」「はいはい」。付き添いなしでは投票所へ行けないようなお年寄りだから、強制はできない。 昔、医者は往診カバンに200票は入れて歩いている、と言われていた
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