医薬経済オンライン

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一筆入魂

本質を見失った報道にも責任の一端も

社会防衛と個人防衛の議論が不足するなかで

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2013年7月1日号

 私が朝日新聞社の厚生省(厚労省)担当記者として詰めていた92年当時の話だ。 種痘や百日ぜきなどの予防接種を受けた結果、身体だけではなく知恵遅れなど障害を負った児童や遺族が国を相手取って損害賠償を求めた「東海地方予防接種禍訴訟」の控訴審が続いていた。 92年6月、名古屋高裁は「賠償、補償の責任は国にあり、一刻も早く解決すべき」と、双方に対して和解勧告を要請した。ところが国は協議に応じたものの、8月には勧告を拒否した。 当時の新聞を読み返してみると、訴えを起こした原告寄りの記事が紙面を埋め尽しているのに気づく。「国側の和解拒否で原告らに怒りと不安」 本来、感染症に対するワクチンと副反応との関係を議論するためには、「社会防衛か個人防衛か」という観点が欠かせない。だが、そういった問題提起は影を潜めた。これには理由がある。 控訴審に限らず裁判記事とい...  私が朝日新聞社の厚生省(厚労省)担当記者として詰めていた92年当時の話だ。 種痘や百日ぜきなどの予防接種を受けた結果、身体だけではなく知恵遅れなど障害を負った児童や遺族が国を相手取って損害賠償を求めた「東海地方予防接種禍訴訟」の控訴審が続いていた。 92年6月、名古屋高裁は「賠償、補償の責任は国にあり、一刻も早く解決すべき」と、双方に対して和解勧告を要請した。ところが国は協議に応じたものの、8月には勧告を拒否した。 当時の新聞を読み返してみると、訴えを起こした原告寄りの記事が紙面を埋め尽しているのに気づく。「国側の和解拒否で原告らに怒りと不安」 本来、感染症に対するワクチンと副反応との関係を議論するためには、「社会防衛か個人防衛か」という観点が欠かせない。だが、そういった問題提起は影を潜めた。これには理由がある。 控訴審に限らず裁判記事という

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