新技術に実質的便益を求める「市民」の目

海外時報

新技術に実質的便益を求める「市民」の目

QALYは廃棄すべきか、HTA最適化の「解」とは⑤

2013年5月15日号

　ＮＨＳ（英国民保健サービス）の費用を充てがうのに値する便益を提供する治療法かと正面から問いかけた結果、否定的な結論になってしまったとき、税で支える医療としての利用は不適と拒否せざるを得なくなる。余命を告げられた母親の一縷の期待、乳がん新薬のアクセスを国が断つという構図もその一例だ。　窓口負担はなく、国民が等しく医療を受ける権利を約束するが、税収から充てる予算の範囲内で運用する。こうした制限にそれなりに納得が得られていたイングランドで、寝た子を起こしたのがＮＩＣＥ（国立医療技術評価機構）の医療技術評価（ＨＴＡ）だった。エコノミストは、この冷酷な現実を直視する必要を説くが、ＮＩＣＥの歴史は、世論の風当たりに対応を強いられた15年だったとも言える。　逸早くシチズン・カウンシルを設けて市民の意見を吸い上げる仕掛けを整え、末期患者の治療に対する... 　ＮＨＳ（英国民保健サービス）の費用を充てがうのに値する便益を提供する治療法かと正面から問いかけた結果、否定的な結論になってしまったとき、税で支える医療としての利用は不適と拒否せざるを得なくなる。余命を告げられた母親の一縷の期待、乳がん新薬のアクセスを国が断つという構図もその一例だ。　窓口負担はなく、国民が等しく医療を受ける権利を約束するが、税収から充てる予算の範囲内で運用する。こうした制限にそれなりに納得が得られていたイングランドで、寝た子を起こしたのがＮＩＣＥ（国立医療技術評価機構）の医療技術評価（ＨＴＡ）だった。エコノミストは、この冷酷な現実を直視する必要を説くが、ＮＩＣＥの歴史は、世論の風当たりに対応を強いられた15年だったとも言える。　逸早くシチズン・カウンシルを設けて市民の意見を吸い上げる仕掛けを整え、末期患者の治療に対する費

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