いまさら聞けない生薬・漢方薬
漢方薬が含む化合物の消化管吸収
第10回
名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野准教授 牧野利明
2013年5月15日号
漢方薬は基本的に経口投与を原則としていますから、漢方薬に含まれる化合物は、消化管のなかで消化され、あるいは腸内細菌により代謝された後に吸収され、さらに小腸上皮細胞や肝臓で初回通過効果と呼ばれる代謝反応を得てから、全身を巡ることになります。薬物を体内へ注射するということは、この消化管吸収と初回通過効果における代謝の過程をすっ飛ばして、薬物がいきなり全身を巡ることになりますので、薬物を経口投与したときと注射したときと作用の発現は大きく異なります。
この差を埋めるために有用なツールが、薬物動態学のうち、とくに「吸収」に関する知識です。つまり、漢方薬を口から服用した後、血液中に現れる漢方薬由来の化合物の血中濃度推移を測定し、それと漢方薬を注射したときの血中濃度あるいは培養細胞に直接作用させたときの培養液中の濃度とを比較することで、基礎実験で...
漢方薬は基本的に経口投与を原則としていますから、漢方薬に含まれる化合物は、消化管のなかで消化され、あるいは腸内細菌により代謝された後に吸収され、さらに小腸上皮細胞や肝臓で初回通過効果と呼ばれる代謝反応を得てから、全身を巡ることになります。薬物を体内へ注射するということは、この消化管吸収と初回通過効果における代謝の過程をすっ飛ばして、薬物がいきなり全身を巡ることになりますので、薬物を経口投与したときと注射したときと作用の発現は大きく異なります。
この差を埋めるために有用なツールが、薬物動態学のうち、とくに「吸収」に関する知識です。つまり、漢方薬を口から服用した後、血液中に現れる漢方薬由来の化合物の血中濃度推移を測定し、それと漢方薬を注射したときの血中濃度あるいは培養細胞に直接作用させたときの培養液中の濃度とを比較することで、基礎実験で得ら
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