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この国につけるクスリ 社会保障よもやま話

胆管がんで“強制捜査”

東京福祉大学・大学院教授 喜多村悦史

2013年5月15日号

 厚生労働省大阪労働局が大阪市の印刷会社を家宅捜索した。同社の元従業員ら16人の胆管がん罹患への“異例迅速な”労災認定に続く権限発動である。厚労省は労働基準関連の法令違反に際して、摘発・送検といった警察同等の権限を有するが、通常はあまり行使しない。焦点となる「1、2ジクロロプロパン」と胆管がん発生の因果関係を解明する材料収集が目的だろう。 ひと口に労災認定といっても、工場で化学薬品が爆発し従業員が即死したというような災害案件では、認定は容易だ。一方、がんなどの病気案件での認定は、業務起因性の証明が極めて難しい。がんの機序は人さまざま。どれくらいの濃度の「1、2ジクロロプロパン」を、どの程度の期間吸引すれば胆管がんの直接的原因と見做してよいのか。人体実験するわけにもいかず、状況証拠を重ねて推論するほかないと思われる。 本件でも、同社の作業場が換気...  厚生労働省大阪労働局が大阪市の印刷会社を家宅捜索した。同社の元従業員ら16人の胆管がん罹患への“異例迅速な”労災認定に続く権限発動である。厚労省は労働基準関連の法令違反に際して、摘発・送検といった警察同等の権限を有するが、通常はあまり行使しない。焦点となる「1、2ジクロロプロパン」と胆管がん発生の因果関係を解明する材料収集が目的だろう。 ひと口に労災認定といっても、工場で化学薬品が爆発し従業員が即死したというような災害案件では、認定は容易だ。一方、がんなどの病気案件での認定は、業務起因性の証明が極めて難しい。がんの機序は人さまざま。どれくらいの濃度の「1、2ジクロロプロパン」を、どの程度の期間吸引すれば胆管がんの直接的原因と見做してよいのか。人体実験するわけにもいかず、状況証拠を重ねて推論するほかないと思われる。 本件でも、同社の作業場が換気の悪

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