一筆入魂
リスクとベネフィットの狭間に陥った盲点
イレッサ訴訟最高裁判決の本質とは
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2013年5月1日号
2年前のことだ。私の知人の母親が肺がんで治療を受けていた。医師から抗がん剤「イレッサ」を勧められたという。
イレッサ問題を取材したことのある私に相談が持ちかけられた。
「イレッサを使うことに、ためらいがある」
聞くと、間質性肺炎の副作用については医師から説明を受けている。服用から比較的早期に症状が現れ、致死的な経過を辿ることが少なくないことも伝えられていた。
私は知人にこうアドバイスした。
「どんな抗がん剤でも、副作用はつきものだ。余命を伸ばすこともあれば、縮めてしまうこともある。平均して半年や1年も余命が伸びるといっても、それはあくまで平均値で、お母さんの場合に当てはまるかどうかはわからない。副作用に苦しんで亡くなる場合もあるし、劇的に効くこともゼロではない。すべての情報をもとに、本人と話し合って決め...
2年前のことだ。私の知人の母親が肺がんで治療を受けていた。医師から抗がん剤「イレッサ」を勧められたという。
イレッサ問題を取材したことのある私に相談が持ちかけられた。
「イレッサを使うことに、ためらいがある」
聞くと、間質性肺炎の副作用については医師から説明を受けている。服用から比較的早期に症状が現れ、致死的な経過を辿ることが少なくないことも伝えられていた。
私は知人にこうアドバイスした。
「どんな抗がん剤でも、副作用はつきものだ。余命を伸ばすこともあれば、縮めてしまうこともある。平均して半年や1年も余命が伸びるといっても、それはあくまで平均値で、お母さんの場合に当てはまるかどうかはわからない。副作用に苦しんで亡くなる場合もあるし、劇的に効くこともゼロではない。すべての情報をもとに、本人と話し合って決めるし
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