一筆入魂
深い闇を掘り返す意味はあるのか
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2012年11月15日号
海辺に佇む病院は、津波で廃墟となった今でも、湾内のどこからでも見渡せる。東日本大震災から1年半が過ぎても、まるでエアポケットのように人々の心から遠ざけられているこの病院には、触れるに触れられない、深い闇がある。
× × ×
宮城県石巻市雄勝町は、リアス式海岸で有名な三陸地方の南端にある牡鹿半島のやや北に位置する。追波湾と雄勝湾に挟まれた雄勝半島の付け根に、町の中心がある。
石巻市役所から直線で北東に17キロほどの距離だが、路線バスも電車も通っていない。車で北上川の堤防沿いの県道を河口近くまで遡り、さらに南東へ向け、釜谷峠を超えて町に入らねばならない。約30キロの道のりになる。この行程以外には、冬季は閉鎖されている林道を通るルートしかない。震災当時、陸の孤島となって情報が寸断されたのは、このためだ。
雄勝半島は、海岸まで山が迫っている...
海辺に佇む病院は、津波で廃墟となった今でも、湾内のどこからでも見渡せる。東日本大震災から1年半が過ぎても、まるでエアポケットのように人々の心から遠ざけられているこの病院には、触れるに触れられない、深い闇がある。
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宮城県石巻市雄勝町は、リアス式海岸で有名な三陸地方の南端にある牡鹿半島のやや北に位置する。追波湾と雄勝湾に挟まれた雄勝半島の付け根に、町の中心がある。
石巻市役所から直線で北東に17キロほどの距離だが、路線バスも電車も通っていない。車で北上川の堤防沿いの県道を河口近くまで遡り、さらに南東へ向け、釜谷峠を超えて町に入らねばならない。約30キロの道のりになる。この行程以外には、冬季は閉鎖されている林道を通るルートしかない。震災当時、陸の孤島となって情報が寸断されたのは、このためだ。
雄勝半島は、海岸まで山が迫っているた
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