この国につけるクスリ 社会保障よもやま話
いじめ自殺と原発再開
東京福祉大学・大学院教授 喜多村悦史
2012年8月15日号
ロンドン五輪前、テレビ報道の話題の双璧は、「大津市の中学生自殺」と「原子力発電所再稼働問題」だった。視聴者の関心のある事象を正確に詳しく報道するのは、マスコミの使命である。だが、物事の本質を踏まえず、表層だけを訳知り顔で論じている番組が、残念ながら、少なくない。 先日のワイドショーでも、大津市教育委員会の対応について、コメンテーターAが「これはもはや一自治体の問題を越えています」と述べ、コメンテーターBが「地方分権が進んで文部科学省が前面に出られないのです。これは制度改正を要します」と呼応した。 教委の対応に怒り心頭になっていると、つい「その通り」と同調しそうだが、こうした「なんでも国の権限で」という安易さが、実はこの種の教育現場の問題解決を難しくしている。 歴史を紐解けば、戦前の日本は、すべての権力が中央政府ひいては天皇に直結してい...
ロンドン五輪前、テレビ報道の話題の双璧は、「大津市の中学生自殺」と「原子力発電所再稼働問題」だった。視聴者の関心のある事象を正確に詳しく報道するのは、マスコミの使命である。だが、物事の本質を踏まえず、表層だけを訳知り顔で論じている番組が、残念ながら、少なくない。 先日のワイドショーでも、大津市教育委員会の対応について、コメンテーターAが「これはもはや一自治体の問題を越えています」と述べ、コメンテーターBが「地方分権が進んで文部科学省が前面に出られないのです。これは制度改正を要します」と呼応した。 教委の対応に怒り心頭になっていると、つい「その通り」と同調しそうだが、こうした「なんでも国の権限で」という安易さが、実はこの種の教育現場の問題解決を難しくしている。 歴史を紐解けば、戦前の日本は、すべての権力が中央政府ひいては天皇に直結していた。
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