医薬経済オンライン

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ドクターかでいの医療の裏技

無明の井

第17回

かでい伝次郎

2012年6月15日号

 先日、脳死臓器移植をテーマにした能「無明の井」を観た。これは神農、華佗と並ぶ古代中国の医聖、扁鵲の故事を本説(典拠)とするもので、免疫学者の故多田富雄先生(東京大学名誉教授)が89年に書き下ろし、91年に初演された新作能の再演である。  この扁鵲の故事がどのようなものかといえば、「列子」湯問編第五に出てくるエピソードだ。魯の公扈、趙の齊嬰という2人の性格的な長所と欠点が相補的なところに扁鵲が目を付け、2人の心臓をとり替えれば、お互いの欠点が治り、長所ばかりになる(若換汝之心、則均於善矣)と言って説得し、心臓の交換移植(剖胸探心、易而置之)を行った。ところが手術は成功したものの、2人の患者は帰る場所まで入れ替わってしまい、互いの妻を取り違えた。2人の妻にしてみれば、見知らぬ男が自分を抱こうとしたわけで大問題となり、2家族は扁鵲相手に訴訟を起こし、...  先日、脳死臓器移植をテーマにした能「無明の井」を観た。これは神農、華佗と並ぶ古代中国の医聖、扁鵲の故事を本説(典拠)とするもので、免疫学者の故多田富雄先生(東京大学名誉教授)が89年に書き下ろし、91年に初演された新作能の再演である。  この扁鵲の故事がどのようなものかといえば、「列子」湯問編第五に出てくるエピソードだ。魯の公扈、趙の齊嬰という2人の性格的な長所と欠点が相補的なところに扁鵲が目を付け、2人の心臓をとり替えれば、お互いの欠点が治り、長所ばかりになる(若換汝之心、則均於善矣)と言って説得し、心臓の交換移植(剖胸探心、易而置之)を行った。ところが手術は成功したものの、2人の患者は帰る場所まで入れ替わってしまい、互いの妻を取り違えた。2人の妻にしてみれば、見知らぬ男が自分を抱こうとしたわけで大問題となり、2家族は扁鵲相手に訴訟を起こし、扁

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