老医師のつぶやき
5日前の花見
第2回
吉原忠男(前埼玉県医師会長)
2012年6月1日号
一昨年の春、患者さんというよりも、知り合いの女性が亡くなった。優しく美しい人だった。
なぜ、「というよりも」なんて表現をするかというと、私の専門外の疾患の人だからだ。2、3ヵ所の病院にかかってから、悩んで私の診察室に来た。話をよく聞いてみると、どうも早く手術をしたほうがいいようだ。さらに親しい産婦人科の友人に紹介して、もう一度診てもらった。やはり、子宮頚部がんで少し進行していると思うから一刻も早く全部摘出したほうがいい、と電話が来た。
彼女に来てもらって説明したが、思い切りができない。子宮頚部の患部だけ切除してお産をさせる医師をインターネットで見掛けたというのだ。どうしても、子どもが欲しい。諦めきれないのだという。しかし、診てもらった医師のアドバイスは、みんな同じで、「子どもさんは諦めなさい」と言うのだそうだ。
がんが周囲に浸潤して...
一昨年の春、患者さんというよりも、知り合いの女性が亡くなった。優しく美しい人だった。
なぜ、「というよりも」なんて表現をするかというと、私の専門外の疾患の人だからだ。2、3ヵ所の病院にかかってから、悩んで私の診察室に来た。話をよく聞いてみると、どうも早く手術をしたほうがいいようだ。さらに親しい産婦人科の友人に紹介して、もう一度診てもらった。やはり、子宮頚部がんで少し進行していると思うから一刻も早く全部摘出したほうがいい、と電話が来た。
彼女に来てもらって説明したが、思い切りができない。子宮頚部の患部だけ切除してお産をさせる医師をインターネットで見掛けたというのだ。どうしても、子どもが欲しい。諦めきれないのだという。しかし、診てもらった医師のアドバイスは、みんな同じで、「子どもさんは諦めなさい」と言うのだそうだ。
がんが周囲に浸潤している
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