この国につけるクスリ 社会保障よもやま話
厚生年金基金の本質的矛盾
東京福祉大学・大学院教授 喜多村悦史
2012年5月1日号
「あなたに相談がある」 20世紀の終わり頃だったが、郷里での講演終了後、中学時代の同級生が演台に駆け寄ってきた。父親から引き継いだ家業の関係で総合型の厚生年金基金に加入しているが、積立金の運用利回りを予定通りに行っていないとの理由で掛金の追加払いを求められた。どうしたものか、という内容だった。 従業員の老後は守ってあげたいが、会社収支はギリギリの状態。「本当のところを教えてちょうだい」。少女時代のままの黒い瞳が、ボクを正面から見据えた。 成熟経済下での高利回りは夢想というのがボクの持論。よってアドバイスは簡明。基金に現実的給付設計への転換を要求するべし。が、十中九分九厘受け入れられないだろうから、あれこれ議論せず、銀行から借金してでも要請額をそっくり支払い、一刻も早く脱退してしまうこと、と助言した。問題を先送りしても基金は結局破綻する。そ...
「あなたに相談がある」 20世紀の終わり頃だったが、郷里での講演終了後、中学時代の同級生が演台に駆け寄ってきた。父親から引き継いだ家業の関係で総合型の厚生年金基金に加入しているが、積立金の運用利回りを予定通りに行っていないとの理由で掛金の追加払いを求められた。どうしたものか、という内容だった。 従業員の老後は守ってあげたいが、会社収支はギリギリの状態。「本当のところを教えてちょうだい」。少女時代のままの黒い瞳が、ボクを正面から見据えた。 成熟経済下での高利回りは夢想というのがボクの持論。よってアドバイスは簡明。基金に現実的給付設計への転換を要求するべし。が、十中九分九厘受け入れられないだろうから、あれこれ議論せず、銀行から借金してでも要請額をそっくり支払い、一刻も早く脱退してしまうこと、と助言した。問題を先送りしても基金は結局破綻する。それに
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