一筆入魂
菅前首相はなぜ英雄になれなかったのか
辰濃哲郎
2012年1月15日号
朝日新聞社の社会部に在籍していた時代に、こんなことがあった。
89年5月のことだ。リクルート事件で親族や秘書名義で未公開株を受け取っていた故加藤六月氏を担当した私は、議員会館の事務所前で加藤氏の帰りを待っていた。
ずんぐりした加藤氏が、多くの政治部記者を従えて議員会館の自室に戻ってきた。その列の最後尾について、私も部屋に入る。加藤氏を取り囲んで、政治部記者たちが話を聞こうとしたときだった。記者のひとりが私を指して、こう言った。
「社会部の記者がいますが」
その顔はよく知っている。私と同じ朝日新聞の政治部記者だ。
指摘を受けた秘書のひとりが、私に近づき耳元で囁いた。
「社会部の方はご遠慮ください」
私は引き揚げざるを得なかった。
政治部記者にとって、政治家に嫌われるほど辛いものはない。同じ朝日の社会部記者が紛れ込んでいることがわかった...
朝日新聞社の社会部に在籍していた時代に、こんなことがあった。
89年5月のことだ。リクルート事件で親族や秘書名義で未公開株を受け取っていた故加藤六月氏を担当した私は、議員会館の事務所前で加藤氏の帰りを待っていた。
ずんぐりした加藤氏が、多くの政治部記者を従えて議員会館の自室に戻ってきた。その列の最後尾について、私も部屋に入る。加藤氏を取り囲んで、政治部記者たちが話を聞こうとしたときだった。記者のひとりが私を指して、こう言った。
「社会部の記者がいますが」
その顔はよく知っている。私と同じ朝日新聞の政治部記者だ。
指摘を受けた秘書のひとりが、私に近づき耳元で囁いた。
「社会部の方はご遠慮ください」
私は引き揚げざるを得なかった。
政治部記者にとって、政治家に嫌われるほど辛いものはない。同じ朝日の社会部記者が紛れ込んでいることがわかったら、
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